女のファッションはイエスとノーを表している

2010-12-27

女のレスポンスは、「承諾のまわり道かもしれない拒絶」と「取り消しの可能性のある承諾」に満ちている。おわかりのように、こうした女のコケットリーは《誘惑の技法》である。イエスと言うのは相手をひきよせるため、ノーと言うのは遠ざけるため、期待を先送りにして熱望をそそるためだ。それがどれほど計算されたものであるかどうかはさておき、この意味でコケットリーとはたしかに異性をひきつけるための心理的な技法である。それはそれとして、ここでジンメルが「コケットリーという形式」と言っていることに注意しておきたい。そう、コケットリーとは《形式》であり、《スタイル》なのである。実際、ジンメルは何度もくりかえし「コケットリーという形式」と言っている。イエスもノーも、あくまで《表現のスタイル》にほかならない。形式の哲学者と呼ばれるジンメルにいかにもふさわしいが、たとえばファッションがそうである。女のファッションはイエスとノーを同時にあらわしてはいないだろうか。服を着たからだは、自分を見せながら同時に隠しているし、自分をさしだしながら同時に護っている。こうして対立する二つを同時に表現することこそコケットリーという形式なのであり、コケットリーとはそのままファッションの根本的な技法でもある。だが、それについては次章で詳しくみることにして、ここではコケットリーがたんに心理的なかけひき以上のものだということを確認しておこう。